どれほど年月が流れたでしょう、時折そのお店の前を通る機会がありましたがいつもそこにはやや高いところに鎮座したスバルが鼻先だけをチラとのぞかせていました、ハコスカからケサブローことマツダK３６０に乗り換え、完全に旧いクルマの嗜好がサブロクへとシフトした２００９年ごろ、あのスバルのことがとても気になる様になってきました
まずは行かなきゃ！そう思いつつもスバルの価値を知っている今、あの当時聞いた値段で売ってくれようはずもなかろう、ただ恥をかきにいくのがおっくうで私はなかなか腰が上げることが出来ませんでした

しかし普通、熱に耐えかねれば人間はその身を横たえるもの、だがサブロク熱はさにあらず、その身をシャキンと直立せしめ、あまつさえ左右の脚を勝手に前後させる、という諸症状を発現させるのです

「たのもーう！」とは言いませんでしたがヤル気スイッチの入った私は静かに、しかしやや高い圧力の鼻息とともにほぼ１０年ぶりにそのお店の敷居をまたいだのです

しかしあの当時のお店の人はすでに居らず、社長さんという方が奥から出ていらした、約１０年前に交わしたお話と自分の熱意を伝えたあとに社長さんがおっしゃったのは
●もうその時の店員さんはどこに居るかわからないこと（外国に行ったらしい）
●その人が書類をどこにしまったかわからないこと
●残念だがその値段ではやはり出せないということ（そりゃそうだ）
●他にも欲しいと言っている人が複数人いること
というようなお話でした、スバルを高いところから降ろす決断をするのも書類の不在が抵抗となっているらしい、あまり芳しいお返事が聞けずに少し落胆しつつ名前と連絡先を置いてお店を離れたものの、なんの！書類が見つからないあいだはスバルも突然どこかへ行ってしまうこともあるまい、と、たまに顔を出す骨董屋詣でを続けることにしました、そんな２０１３年のある日、友人が「なんだか店内を片付けてたぞ」とのこと、ご高齢の社長さん、まさか廃業なぞ？と飛んでいけばそんなつもりはないが少し整理、縮小したいとおっしゃる、あらためてしばらくスバルの話、ええ？ボクの連絡先のメモなくしちゃったの？あっぶな〜い！もう一回ちゃんと書いていきますからね！？

状況が動いたのはこの２０１３年１１月、自宅でウッドデッキの改修のため休日にトンテンカンとやっているとiPhoneの音楽が突然呼び出し音に変わった、社長さんの奥様からだ、「書類が見つかり、車体も降ろしました、どうします？買います？」提示された金額は当時のものではないけれど、書類付きのスバル３６０としてはやはりすこぶる安い！デッキ上で平均より少し小さい私のアタマのプロセッサーが「スパコン（京）」なみにありとあらゆる金策をはじき出す、チーン☆！「いただきます！」

並み居る希望者たちをすり抜けてスコーン☆と私の眉間に白羽の矢が到達した理由は「自分で直せるみたいだから」、ということだそうで、選んでいただけたことに深く感謝します、選抜に際しては社長さんのお仲間からもそのような助言があったとか、あだやおろそかには乗れません、ナムナム

社長さんいわく約１３年ぶりに地上に降り立ったというスバル３６０、考えてみれば私もしっかり細部を見るのははじめてだ、意外と？あちこちヤレている、もちろんエンジン不動、欠品もそこかしこ、しかし！「惚れてしまえばアビスモ・ネグロ」！合縁奇縁、１２年の紆余曲折を経てスバルライフはいまスタートを切ったばかり、楽しもう♪！

2013/12/16